シフトチェンジできない!?トラックのギアが入らない原因や応急処置の方法とは?
多くの車両に操作が簡単なAT(オートマチック・トランスミッション)が採用されていますが、多くの積み荷を積載し車両重量が重くなるトラックは依然としてMT(マニュアル・トランスミッション)の搭載率が高い傾向にあります。使用するギア段を任意に選択できるMTはトラックの運転に慣れたドライバーにとって効率的に運転できる魅力的な変速システムですが、走行中にギアが入らないというトラブル発生のリスクを孕んでいます。ギアトラブルの原因や応急処置の方法を紹介します。
目次
多くのトラックに搭載されるMT(手動変速機)とは?
トラックは発進や加速・登坂時など強い駆動力が必要な時には低いギア段、スピードに乗った高速巡行時には高いギア段を使用して走行しますが、使用するギア段の選択をドライバー自身が行ないながら走行するのがMT(手動変速機)です。
左足でクラッチを踏み込んだ状態でシフトノブを左手で操作してギア段を選び、クラッチを戻してシフトチェンジを行います。ギアの選択を誤るとギクシャクした走りになり騒音・振動・燃費の悪化などを引きおこしますが、適切なギア選択を行えば快適な低燃費走行を実現します。
オーソドックスな変速システムですが多くのドライバーに支持され、現在でも根強い人気を誇りトラックへの搭載率が高い変速システムだと言えます。
トランスミッションの役割は?
エンジンで発生する動力を1:1でダイレクトに駆動輪に伝えるのは非効率です。変速装置付き自転車をイメージすると判りやすいのですが、発進や登坂など大きな力が必要な時はペダル直結のギアの大きさと駆動輪である後輪ギアの大きさが近い方がスムーズです。
スピードが乗ってくると後輪ギアを小さなものに変速すれば、ペダルをゆっくり踏んでも高速巡行することが可能となります。単純な自転車の変速装置の原理と同じ原理で遥かに精密に強固に作られているのがトラックに搭載するトランスミッションです。
トランスミッション内は複雑に組み合わされた歯車が組み込まれ、歯車の組み合わせで変速比を発生させ、ギア段が低ければ高変速比でギア段が高くなるほど変速比は低くなります。
変速装置であるトランスミッションはAT・MTを問わず全ての車両に搭載されていますが、自動変速装置であるAT車よりも手動変速を行うMT車で存在感を感じる装置だと言えます。
ギアが入らないトラブルの発生源とは?
多くのトラックに採用される変速システムMTですが、変速しようとしてもギアが入らずシフトチェンジできないトラブルが発生することがあります。効率的な運航を実現するために不可欠な変速装置ですが、シフトチェンジができないと最悪のケースでは走行不能に陥ってしまいますのでギアが入らないトラブルの発生源について紹介します。
ギアトラブルの原因を系統別に探る
ギアが入らないギアトラブルが生じた際には、トランスミッションのどの系統でトラブルが発生しているのかを察知することが重要で、発生源の特定が早急なリカバリーのポイントとなります。
トランスミッションは次に挙げる3系統に分類され、発生源ごとにギアトラブルの症状が異なります。
・ミッション系統 ・クラッチ系統 ・ミッションリンク系統ミッション系統
トランスミッション本体の問題によって発生するギアトラブルがミッション系統のトラブルです。1速・2速など特定のギアが入らない症状や停車時でエンジン停止状態でもギアが入らないなどの症状が発生します。
ミッション内部のギアの摩耗が原因となっているケースが多いですが、トランスミッションはエンジンと並んで高価なパーツですので、交換やミッションのオーバーホールにはそれなりの費用がかかります。
クラッチ系統
エンジン出力はクラッチ装置を経由してトランスミッションに伝えられるため、変速時はクラッチ操作でエンジン出力を一旦切断しシフトチェンジを行います。ペダル操作で動力伝動をコントロールできるクラッチですから、問題が生じるとギアが入らないトラブルの原因となります。
クラッチ系統のトラブルの多くはクラッチが完全に切れなくなっていることが原因で、クラッチが切れていない状態で変速してもギア鳴りが生じギアが入らない症状が出ます。エンジンを止めた停車状態では問題なくギアが入っても、エンジン起動時にギア鳴りがしてギアが入らなければクラッチが切れていないと判断できます。
ワイヤー式クラッチであれば遊びの調整、油圧式であればレリーズシリンダやマスターシリンダからの油漏れの確認やエア抜きで改善できるケースが一般的ですが、クラッチのレリーズベアリングの動きが悪くてクラッチが入らない場合はオーバーホールが必要となります。
ミッションのリンク系統
車内からトランスミッション本体を操作するのがシフトレバーですが、シフトレバーとトランスミッションを接続するミッションリンゲージの不具合でギアが入らないトラブルが発生するケースもあります。
シフトレバーとトランスミッションはワイヤーやロッドで接続されていますが、ワイヤーがスムーズに動かない、ステーへの固定プレートの脱落、ロッドジョイント部にガタ付きがある、ロッドブッシュの摩耗などがギアトラブルの原因となります。
ワイヤーや脱落した固定プレート、ロッドジョイントの調整、ブッシュ交換などでギアが入らないトラブルを改善・修理することができます。
ギアが入らないトラブルを切り抜ける!応急処置法は?
走行中に当然ギアが入らないトラブルが発生すると驚きますし、「走行不能になる?」という危機感で取り乱してしまいがちですが、シフトチェンジができないギアトラブルが発生しても発生原因によっては応急処置で対応し走行を続けられるケースもあります。
リカバリー方法はギアトラブルの原因によって異なる
ギアが入らないトラブルは必ずしも走行不能に直結するものではない場合もあるので、ギアトラブルの原因を探り適切なリカバリーを行えば自走して整備工場まで辿り着くことも期待できます。
しかしリカバリーで自走することが可能となってもあくまで応急処置ですから、そのまま整備工場へトラックを持ち込み専門家に症状を確認してもらい適切な処置を行ってもらう必要があります。
シンクロが原因の場合
使用するギア段を任意に選べるマニュアルミッション車ですが、ギア段が異なるということはギア比が異なることを意味し走行中のギアはギア段ごとに回転速度が異なります。回転速度が異なるとギアが入らずシフトチェンジできませんので、ギア比の異なる各ギア段の回転数を同期させる必要があります。
異なるギアの回転速度を同期させる装置がシンクロメッシュ(通称:シンクロ)で、シンクロの働きでギア段の異なるギアの回転数を同期させスムーズなシフトチェンジが行えます。
シンクロが原因でギアが入らない状態に陥った際に効果的な方法として挙げられるのが「ダブルクラッチ」を用いたシフトチェンジで、シンクロが普及するまでのトラックはダブルクラッチでギアの回転数を同期させシフトチェンジを行っていました。
ダブルクラッチは次の手順で行うシフトチェンジテクニックです。
- クラッチを切ってシフトレバーをニュートラルにする
- クラッチを繋いでアクセルを踏みエンジンを軽く煽る
- クラッチを切ってシフト操作を行う
- クラッチを繋ぐ
通常のシフト操作に一度ニュートラルでエンジンを煽る動作を加えるのがダブルクラッチで、エンジンを煽ることでギアの回転数を同期することが可能になります。
クラッチが原因の場合
クラッチが原因でギアが入らないトラブルが発生している場合は、既に紹介したクラッチワイヤーや固定プレート、ロッドジョイントの調整でトラブルを解決することができるケースが多いので、これらの調整を行います。
調整後しばらくは走行可能ですが、早めに整備工場などで整備することをおすすめします。
トラックの専門家が扱う中古トラック販売店なら安心!
ギアが入らないトラブルにはできることなら遭遇したくないものですが、ギアトラブルはある程度ならセルフリカバリーも可能で、絶望的に重篤なトラブルではないことが判りました。
ギアトラブルは日常のメンテナンス状態が良好であれば回避でき、発生しても軽微なトラブルとして対応でき得る類のトラブルであるケースが多いと言えます。中古トラックに対して「トラブル発生率が高いのでは?」というネガティブなイメージがありますが、現在は良好な整備環境を持ち取り扱い車両の管理をしっかりと行う中古トラック販売店が多いと言えます。
中古トラックは車両コンディションの個体差が大きく100%安心とは言い切ることができませんが、低年式や過走行の車両は現車確認をしっかり行いメンテナンス履歴などの状態表も確認することでコンディションを掴むことができます。
まとめ
走行不能や積み荷の延着などに繋がる面倒なギアトラブルは発生原因の究明速度が速い程リカバリーのチャンスが増えるので、万一ギアが入らないトラブルが発生した場合は急いでトラブルの原因を探りましょう。
ギアトラブルの原因となるのは次の3つのケースが多いので、3つのポイントを中心に原因究明を行ってみてください。
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- トランスミッション本体で生じるミッション系統のトラブル
- エンジンとトランスミッションを繋ぐクラッチ系統のトラブル
- さらにきれいな仕上がりを望むなら耐水ペーパーなどで磨くとよい
- シフトレバーとトランスミッションを繋ぐリンク系統のトラブル